”病院から保険外リハビリの会社へ転職”
最近は個人起業する療法士は増えてきていますが、保険外リハを会社規模でやっている沖縄企業はまだなかなかありません。
沖縄県内でデイサービス14店舗、訪問看護ステーション5店舗を運営しているベストライフ社が運営している「脳卒中リハビリセンターホコトレ」に、リハビリ病院から転職した理学療法士にインタビューさせていただきました。
保険外リハビリを志している療法士、ホコトレに興味がある療法士に届いて欲しい、魅力的な内容になっているので、ぜひ最後までご覧ください。
理学療法士16年目2009年名古屋大学医学部保健学科理学療法学専攻卒業
2011年名古屋大学大学院医学系研究科
リハビリテーション療法学専攻理学療法学分野前期課程修了
2011~2024年 沖縄リハビリテーションセンター病院 勤務
理学療法沖縄 論文査読
2021年~理学療法士養成校非常勤講師
沖縄県理学療法学術大会 座長
2024年~ホコトレ入社
沖縄県理学療法学術大会 副実行委員長
脳卒中に関する英語論文、学会発表
リハビリテーション療法学修士号
認定理学療法士(脳卒中)
脳卒中当事者会おきなわ 主催
心のバリアフリーステッカー沖縄プロジェクト代表
脳卒中療養相談士
両立支援コーディネーター
ホコトレに入職した島袋さん(理学療法士)
そんな方が保険外リハに転職なんて、さらに興味が湧いてきます。
どんな点が魅力的だったでしょうか?
脳卒中の当事者会を主催していて、発症後のリハ算定期限が切れた後のリハ手段がないこと、いわゆるリハビリ難民の訴えを直接的に聴いていました。
退院してからのほうが心身共に辛い時期なのに、支えてくれる人・情報を与えてくれる人がいないと。
「脳卒中当事者の本当の意味のリハビリテーション※を実現する」という私の使命を果たすのに、一番大事な時期に関われていないもどかしさを感じました。
ホコトレからお誘いをいただいたときに、誰もが通えるサービスではないにしても、一部のリハ難民を救う手段の一つであるし、管理者山城からそれを担う存在としての誇りややりがいを感じられ、また責任者吉元の事業にかける情熱を聴いて、私もその一役を担えたらと思いました。
保険の枠を超えて当事者の人生の再起に伴走させていただくことで、当事者と一緒に見るその先の景色がどんなものなのか、ワクワク感があります。
魅力だったのは、個人事業主とか起業ではなく勤め人として、脳卒中リハに専念できること。
夢や使命にかける強い思いと同時に、母として妻として何よりも大事な守るべき存在がいるので、不器用な私にとってハイリスクなチャレンジは困難なことです。それでも使命をあきらめずに、家庭と両立させながら挑戦させてもらえる環境はとても貴重だと思いました。
実際に働いてみても、家庭の時間もしっかり確保しつつ、やりたいことに集中できる環境は私にぴったりだなと思っています。
利用者に選択権がある環境で「あなただからお願いしたい」と思ってもらえるほうが、その方にとっても、私自身の成長にとっても良いと思ったのもあります。病院では、難しいケースを担当させていただくことも多かったですが、病院の機能上利用者が療法士を選ぶ権利はありません。
利用者が選べる環境で自分を選んでもらうには、それに相応する信頼と高い技術が求められるため、さらなる自己成長につながると思いました。
※本当の意味のリハビリテーション
リハビリテーション医学の祖 上田敏先生の定義を指します。
機能回復だけではない全人間的復権。その人らしく生きる権利を獲得していくこと。発症を契機に、発症前に勝るとも劣らない意義深い人生を再構築していくこと。
過去のプロジェクトなど関わったものでどのような役割を果たしてきましたか?
行動力と論理的思考力、共感力・傾聴力です。
行動力:やりたいと思ったことは、あまり躊躇なくすぐ動けます。
動いていくことでさらにフットワークが軽くなり次の行動もしやすくなります。
失敗もするしへこむけど、感情の波が落ち着いたらあとはPDCA回してまた動くだけです。
それを繰り返していくうちに、あの時はこれくらいで凹んでたけど今じゃ何とも思わない、ってことに気づいたりもしますね。
論理的思考力:大学院の研究で培ったこの力は、病院での研究活動、臨床現場、日常生活でも大いに役立っています。
傾聴・共感力:もともと相手の生きざまとか、考え方、人生の話を聴くのが好きですが、脳卒中当事者のピアカウンセラーさんから傾聴やカウンセリングに必要なスキルを学ばせていただき、「聴き方」を身につけたことは、私の強みになりつつあると感じます(まだまだ発展途上ですが)。
話を聴くなかで、当事者とともに何度涙を流したか覚えてないくらい、一緒に泣いたり笑ったりしています。
昔は涙もろいのは弱みだと思っていた(今でも弱みとして出ることはある)けど、一緒に泣いてくれてありがとうと言われたときに、誰かの癒しになるなら場合によっては強みかもしれないと思いました(女優泣きではありません笑)。
研究や技術研鑽に力を入れていた当初の私は、この共感・傾聴力の重要性にあまり気づいていなかったけど、脳卒中当事者の話を聴いているうちに、何らかの病気と闘っている人たちが根本の部分で一番必要としているのはそこなのかな、と感じるようになりました。データでは表しにくい部分にこそ、人間の本質が隠れているように感じています。
大前提として、どのフィールドにいても、自分や家族が脳卒中になったらどんな施術やかかわり方をしてほしいかな?というのを考えるようにしています。
それは、当事者会で当事者から伺う生の声と通ずるものがあり、私の信念となっています。
保険外となると、もちろん求められるレベルも高いし、決して安くはない料金をいただくので、それ以上の価値を提供したいと思っています。ご本人のニーズに応じてリハの内容を吟味し、「エビデンスベースだけどエビデンスだけにとらわれない」その人に合ったプログラムを構築し、意思決定を共有します。
また、施術だけすればいいのではなく、全人間的復権のためにはメンタルケアや社会性などのトータルアプローチが必要だと思っているので、それに関して自分の出せるものすべてを出します。
かといってご本人が受け身になってしまわぬよう、人生の再起に一番重要な「主体性」を軸とした関わりを心がけています。
仕事とプライベートのバランスを取るためにどんな工夫や家族での考え方がありますか?
基本的にはそれぞれの時間をしっかり切り替えます。
もともと私は“ながら作業”が苦手で、子供を見ながら仕事するなんてほぼ無理なんです。やってみた時期もありますが、仕事に意識が向くと、子供への対応が雑になってしまいには子供がぐずる→余計時間かかる、といった負のスパイラルになったので、子供といるときは割り切って彼らとの時間を満喫しています。
個人の活動や勉強は平日休みの一人時間や子供たちが寝静まった後にしています。
家族全員揃う日を週に1回は確保するようにしていて、1日中家族で過ごすこともあれば、夫も私もそれぞれやりたいことがあるので、一方がそれをするときはもう一方が子供たちを見るようにして、お互いのやりたいことができるようにバランスをとっています。
まずは事業として私に掲げられた目標は、最低限達成したいと思っています。
あとは、脳卒中当事者が本当の意味のリハビリテーションを実現するために必要な手段を増やしていきたいです。
退院後のリハの需要が今後さらに高まり、ニーズが細分化されていくと思うので、選択肢を増やしてリハ難民を一人でも多く救いたいと思っています。
また、ホコトレで当事者が活躍できる機会をどんどん増やしたいです。例えば、すでにはじまっているyoutubeの当事者インタビューは、もちろん謝礼をお支払いしていますが、出演する当事者自身が「発症からこれまでを振り返り今後の人生を考えるいい機会になった」とか、「自分の経験を通して誰かの役に立ちたいと思っていたので、視聴した当事者や医療従事者に影響を与えられるのは嬉しい」とおっしゃいます。そういう機会が、人生の立て直しのさらなる原動力になると思うのです。
当事者それぞれの強みを生かせる場を当事者と一緒に探して、どんどんチャレンジできる社会にしていきたいと思います。
その成果を数字でどう示すかはこれからじっくり考えていきますが、事業としての成長・拡大に現れるだろうし、一人一人の当事者にとって「ホコトレと一緒に自分の人生を自分の意志で立て直している」と実感できるかが一番大事なのかなと思います。
ホコトレYouTubeチャンネル撮影の様子
(ホコトレYouTubeはこちら)
最後に何か伝えたいことがありますか?
大学院の研究室の恩師石田和人大先生が、理学療法はサイエンスとアートの融合だとおっしゃっていて、経験を積めば積むほどその言葉への理解が深まります。
データやエビデンスを活用してより効果的な理学療法を提供することと、生身の人間の手と心による個別性に応じた創造的理学療法、一定時間を共にする関係だからこそ与えられる心理的効果、などが織りなすものこそ理学療法だと思います。
そんなつかみどころのある部分とない部分が折り重なった理学療法が私は大好きであり、この仕事は私の誇りです。
我々の得意不得意や興味関心がどちらかに偏るのはごく自然なことですが、対象者を目の前にしたときにはどちらのスキルも持ち合わせていないといけないし、その方に合った関わり方、納得していただける治療を選択・共有をするという姿勢を忘れずにいたいです。
脳卒中リハに関する知識技術の研鑽を深め、対象者を患者としてではなく一人の人として対等に接し、想いに寄り添える療法士を、脳卒中当事者は必要としています。
そしてまた、退院後リハ難民となり困っている当事者がたくさんいらっしゃいます。当事者の力になりたいと思っているそこのあなた!あなたと一緒に働ける日を楽しみにしています。
転職したばかりとは思えないしっかりとした、そして壮大なビジョンがあることにすごく驚かされたインタビューでした。
転職を考えている人のみならず、私たち療法士としての仕事のあり方まで考えさせてもらえる貴重な内容になったかと思います。
最後は一緒に働く有志も募っていたので、ぜひこれを見て心動かせれた人はホコトレをマークしておくと良いと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。