昨日、こんなツイートをしました。
臨床で大切になってくるのは、目先の治療技術ではなく、再評価力だと思っています。
再評価ができないと、その治療が効果的だったかどうかの判断ができないので、どんな凄い治療をしたとても
「良かったかもしれないし、良くなかったかもしれない」に終始してしまうからです。
— たなはら (@boooo_boo_jp) 2019年5月17日
これは、前回の記事「セミナーへの参加は重要ではありません。行かなくても大丈夫です。」で書いた続きツイートです。
今回の記事では、ツイート中にある「臨床で大切になってくるのは、目先の治療技術ではなく、再評価力だと思っています。」の "再評価力とは?" について説明していきます。
小手先の治療技術より「再評価力」がもっと大切です。
まず、前回記事を少しだけ振り返ります。
そこで書いたのは、
新人理学療法士が、具体的な課題解決ではなく、不安解消のためにセミナーに行っているのなら行く必要はないですよ、というものでした。
内容を簡単にまとめると以下の通りです。
- 明確な目的があってセミナーに行っているか。
- もし漠然とした不安から参加しているのなら、セミナーには行く必要はない。
- なんとなくセミナーに行っても、漠然とした不安が解消されることはない。
そして、
「大切な事は自分と向き合う事、そして目の前の臨床で起きている事を大切にすること」
という形で締めさせて頂きました。
(まだ読んでいない方は、一度目を通して頂けると嬉しいです。)
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セミナーへの参加は重要ではありません。行かなくても大丈夫です。
最近は、理学療法士や作業療法士を対象にしたセミナーが非常に多くなりました。 中には、かなり高額かつ、怪しげな技術系のセミナーもありますよね。 後輩理学療法士から、「けっこうお高めのセミナーコースに申し ...
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この "目の前の臨床で起きている事を大切にする" にあたるのが、「再評価力」です。
今回の記事では、この「再評価力」について、もう少し詳しく説明したいと思います。
評価と再評価は何が違う?
「治療より評価が大切」というのは、学生の頃からよく聞くフレーズではないでしょうか。再評価の大切さもこの言葉に内包されるものです。
評価という大きな枠組みの中に再評価があるというイメージです。
この「再評価」とは、ある介入を行なった際に、どう変化が起きたのか(もしくは何も変わらなかったのか)を読み取る行為です。
例えば、肩もみをして肩の重みが楽になった。
これは、
- 介入:肩もみ
- 再評価項目:主観的な肩の重み
となります。
再評価は検査者間による差は少ない(はず)
肩もみに当たる部分は人それぞれの手法があっても良い(実際に、数多くの治療手技が存在する)ですが、再評価については大きなずれは起こらないはずです。
例えば、
- 介入前の患者さん本人の主観的な評価
- 頚部や肩甲帯の可動性の変化
- 圧痛点の変化
などが、基本的な再評価項目になるかと思います。
再評価項目は一緒でも、評価内容に大きな差が出る。
介入後に行う評価は、介入前に行う評価内容に完全に依存します。
ちなみに、介入前の評価を事前評価(プレテスト)、介入後の評価を事後評価(ポストテスト)と言ったりします。
もし、中途半端な介入前の評価(プレテスト)を行なっていると、介入後の評価自体も曖昧なものになってしまいます。
例えば、上記で再評価としてあげた3項目のうち、「1.患者さん本人の主観的な評価」について掘り下げてみます。
主観的な評価を多角的に行い、より確からしさを持たせる
主観的な変化は、患者さんにとっては説明しにくく、治療者側にとっては聞きとりにくいので、その難しさを理解しているセラピストであれば、主観的な表現にバリエーションを持たせる事で対応する事ができます。
ただ、「肩のだるさ・重たさ(主観的)」を聴取するのではなく、いくつかの条件で聞いていきます。
例えば、
- 自然な姿勢での肩の主観的なだるさ・重たさ
- 背筋(セスジ)を丸めて円背姿勢をとったときの主観的なだるさ・重たさ
- 頚部を屈曲させ下を見るような姿勢を取った時の主観的なだるさ・重たさ
- 頚部を左右に回旋させて運動時の重たさ
などを複合的に聴取しておけば、介入後に曖昧な返答がかえってきたとしても、いくつかの要素をもって、効果があったと言えそうかを判断する事ができます。
もし、介入前に、「後でもう一度確認するので、なんとなく今の重たさを覚えておいてくださいね。」
と一言付け加えられるだけで、再評価の質が高まります。
※ 微細な変化を読み取りたい場合は、被験者の協力が必要になります。
これはあくまでも「主観的な評価」に関する一例ですが、他の項目の再評価についても似たような事がいえます。
最後に
治療方法が全く何も思い浮かばないという状況は困りますが、何かしらの介入が行えるのであれば、より大切になってくるのは再評価です。
しっかりと効果検証を行う事で、「今、行なった介入が効果的か効果的ではないか」を判断する事ができます。
セミナーなどで学んだ方法も、講師がどれだけ効果的な治療法であるかを力説していたとしても、究極のところ、目の前の患者さんに効果を示すかは分かりません。
これを判断する方法が再評価であり、その再評価を丁寧に行う力が再評価力となります。
前回記事で説明した「大切な事は自分と向き合う事、そして目の前の臨床で起きている事を大切にすること」
再評価の方法は、どこかにセミナーに行って学ぶ事ではなく、目の前で起こりうる事を予測し、それを読み取ろうとする取り組みから少しずつ洗練されていくものです。
再評価の方法を細かく教えてくれるセミナーは皆無です。
再評価力を磨こうと思うと、「人から習う」とかではなく、「目の前の患者に起こっている事を読み取ろうとする徹底した取り組み」が必要です。
最初は検討違いな評価ばかりになりやすいですが、繰り返すうちに必ず向上します。 https://t.co/CtctWHHQtK
— たなはら (@boooo_boo_jp) 2019年5月17日
ここでは、「主観的な肩のだるさや重たさ」という曖昧になりやすい評価項目を例にあげましたが、別の記事で、他の評価法などについても書いていきたいと思います。
この記事を書いた人
たなはら (理学療法士)
twitter:@boooo_boo_jp
理学療法士のお仕事をテーマに「めでぃまーる」に寄稿しています。
新人〜若手療法士を対象に書かせて頂いています。良かったら他の記事も読んでみて下さい。最新記事のお知らせは、twitterからご報告致します。
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