血糖値コントロールの鍵を握る「GI値」とは?
炭水化物を摂取すると、まずは「グリコーゲン」としてグリコーゲンタンクに貯蔵できる量だけを備蓄します。
糖質の体内に存在できる量というのは意外に少なく、血液中のブドウ糖のほか、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして少量を備蓄しているだけです。
使う量以上に食べた糖質は、体の中で糖質から脂肪組織に変換されて貯蔵されます。
これが、食べ過ぎで「太る」というメカニズムです。
単純に糖質を摂りすぎる事が血糖値上昇&肥満に繋がるのですが、「糖質」と上手に付き合うためには、GI値というのを理解する必要があります。
まずは、糖質の特徴から
消化・吸収されて血液で全身をめぐり、全身のエネルギー源として働きます。
糖質は、体の中で1gあたり4kcalのエネルギーになります。同じエネルギー源でも脂質やたんぱく質と比べると、エネルギーとして素早く利用できるという特長があります。
マラソンなどの長時間の運動では主に脂質が使われ、400m走などの中距離走のような比較的短時間の運動や、単発での筋収縮などには糖質からのエネルギーが使われます。
筋肉は糖をエネルギー源とする以外にも、アミノ酸の形でエネルギーを蓄えておき、それを利用(糖新生)する事ができます。
それに対して、脳にはエネルギーの貯蔵能力がありません。
血糖値を保つ役割を担っているのが、肝臓グリコーゲンで、その血糖値のお陰で脳は活動するためのエネルギーを補給し続けられます。
肝臓グリコーゲンは、13時間程度で枯渇するので、その前に糖を補給できないと、エネルギー供給源がなくなり低血糖状態を起こしてしまいます。
つまり、脳を活発に活動させるためにエネルギーを供給したい場合は、『外部から摂取した糖』に頼る必要があります。
「糖」の摂取により血糖値が上がる。
つまり、食事をする事により「血糖値が上昇」します。
前述したように、糖は身体を動かすエネルギーとなりますが、急激に増えてしまうと「インシュリン」というホルモンが血糖値を下げようとします。
これは、血糖値が上がりすぎないようにするための身体の正常な反応で、血液中の糖の量をコントロールしてくれています。しかし、インシュリンには脂肪を作り脂肪細胞の分解を抑制する働きがあるので、分泌されすぎると肥満の原因になってしまいます。
つまり、血液中に溢れ出ている糖の量が多すぎるからコントロールするために、糖を脂肪組織に変換する事で、血糖値を下げようとしているのです。
急激に上昇した分だけ、インシュリンが反応して、上がりすぎた血糖値を下げるために頑張ろうとする事が分かっています。
ここからが今回のポイントですが、「食べるものによって血糖値の上がり方が変わる(結果、インシュリンの分泌量が変わる)」という事まで分かっています。
糖のトータル摂取量はもちろん大事ですが、血糖値の急上昇もダイエットには大敵なのです。
そこで目安となるのが「GI値」です。
GI値とは、グリセミック・インデックス(Glycemic Index)の略で、その食品が体内で糖に変わり血糖値が上昇するスピードを計ったものです。
ブドウ糖を摂取した時の血糖値上昇率を100として、相対的に表されます。
このGI値が低ければ低いほど血糖値の上昇が遅くなり、インシュリンの分泌も抑えられるのです。
GI値が低い・高いの意味
GI値は、糖質量や消化のスピードなどで決まります。
GI値が低い食べ物ほどゆっくりと吸収されるため腹持ちがよく、ダイエットにもぴったりの食材ということになります。
もちろん、血糖値の上昇を低く抑えられるのでインシュリンの分泌も抑える事ができます。
血糖値を急激に上げてしまう可能性がある高GI値の食べ物は、ダイエットの天敵とも言えます。
これとは逆に、血糖値を低く抑える事ができれば、インシュリン量を増加させる必要は低くなります。インシュリンが増加しなければ、血中の糖が脂肪組織に置き換えられる事を抑える事ができるのです。
低GI値・高GI値の目安
GI値の目安としては、「GI値60」を超えると、血糖値の急上昇が起こっている身体が判断して、インシュリンの分泌が増加します。
つまり、この数値より高ければ高いほど、GI値が高いと判断します。一般的な目安はGI値70以上の事を「高GI値食品(食材)」としています。
ちなみにですが、糖尿病などの医学的な管理を必要としている人の場合は、GI値60を超えないようにする事が推奨されています。
GI値が低い・高い食品リスト
高GI値(70↑) |
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中等度(56~69) |
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低GI値(55↓) |
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GI値が高い食品として挙げられるのが「じゃがいも」や「にんじん」です。炭水化物として代表的な「白米」「食パン」なども、GI値はかなり高いです。
「うどん」などの消化吸収が早いと言われている麺類もGI値が高めです。
果糖は、低GIとして表記されていますが、果物の種類によって変動するので一応注意が必要です。
「さつま芋」「里芋」などは、GI値が低くめです。
これは、食物繊維がたっぷり含まれている事によって、消化・吸収が援助になっているためです。
似ている食材でも、GI値が違う場合がある
はちみつとメープルシロップは、見た目も味も似ていますが、GI値は違います。
はちみつは、ミツバチが植物の蜜を体内で果糖とブドウ糖に分解したものです。そしてメープルシロップはサトウカエデの木の樹液を煮つめたものになります。はちみつは分解が進んでるので果糖の濃度が高くなり、GI値が高くなります。
GI値を考慮した食事方法の改善について
GI値が低い食事を意識した方が良い人
「GI値が低い食事を意識した方が良い人」というのは、運動習慣があまりない人、筋トレなどを中心とした運動系ダイエットではなく、ただ制限するだけの糖質制限ダイエットなどの引き算のダイエット方法を選択した人です。
他には、生活習慣病、特に糖尿病を患っている人は、低GIを意識した食事が推奨されています。
GI値が高い食事を意識した方が良い人
筋トレを中心とした運動系ダイエットで痩せようとしている人や、バルクアップなどを行おうとしている人は、トレーニング直後や、朝起きた時だけは、高GIの食事がおすすめです。
高GIの食事は非難される傾向にありますが、素早く吸収して、糖をエネルギーとして使おうとしている現れです。
グリコーゲンタンクが枯渇している時や、筋肉に早くエネルギーを与える事を考えた場合は、高GIというのは非常に魅力的なのです。
すぐに利用する状態なら、むしろ高GI食品が良いというわけです。
GI値をコントロールする方法
高いGI値の食材を食べるべきタイミングは高負荷のトレーニングを行なった直後です。この時は、できるだけ早くエネルギーを筋肉に運びたいのでGI値が高い方が良いです。
また、疲労が溜まっている時も、考えは同じでGI値が高めの食材を選ぶようにしましょう。枯渇したグリコーゲンタンクを早く満たしてくれます。
そこで、「GI値をコントロールする方法」ですが、GI値を低くする方法は、上げるよりは調整が簡単です。実は、「一緒に摂るとGI値を下げてくれる食材」というのがあるんです。
それが、「酢」「食物繊維」「乳製品」「豆類」となっています。
これらを一緒にとると、糖の吸収をゆっくりにして、急激な血糖値上昇を抑えてくれます。
GI値を低くしたい場合は、白米より玄米の方がお勧めです。また、白米に玄米を半分混ぜるだけでも効果的が出ます。また、お粥にする事でGI値を低くする事ができます。
GI値が低いものばかり食べる危険性・副作用
GI値の低い事のデメリットは伏せて、「血糖がゆるやかに上がる」という事を理由にGI値の低い食品は素晴らしい食品であるかのような情報ばかりが目立ちますが、実はデメリットもあります。
GI値の低い食品は「消化がゆっくり」なので、夏バテなどで消化機能が弱っている時は胃腸の負担が強くなってしまいます。
もともと、胃腸の弱い人が継続的にとりつづけると胃・腸に負担をかける事になります。なので、食物繊維そのものは、体に害はありませんが、胃がつっかえている時・キリキリ痛む時、疲労が溜まっている時などは、高GI食品の方が体には優しいです。
注意!GI値が低い事と、食事量は別々で考える。
GI値の低い場合は、血糖値の急激な上昇を抑える事によってインシュリンの過剰分泌を抑える事はできますが、カロリーオーバー(グリコーゲンタンクを越える量の摂取)してしまうと、結局、余った糖質は、脂肪組織に変換されてしまいます。
「低GI食品は太りにくいから安心」と勘違いして、糖質の過剰摂取にならないように注意して下さい。