これから椎間板ヘルニアの治療方法を解説していきますが、「そもそも本当に椎間板ヘルニアなのか?」という事は重要です。
ちゃんとした身体検査を受けていなかったり、画像検査でヘルニアの存在を確認せずに診断されている場合もあります。
治療法について調べる前に、椎間板ヘルニアの診察について詳しく解説した記事にも目を通しておく事をおすすめします。
椎間板ヘルニアの診察法が気になる人におすすめ
-
ちゃんと診察されていない? 腰部椎間板ヘルニアの診察&診断方法について説明します。
まずは、椎間板ヘルニアの原因と病態 椎間板は、線維輪と髄核から構成されています。椎間板の線維輪が損傷して、中にある髄核が出てきて神経を圧迫する事により症状が出るのが椎間板ヘルニアの病態です。 損傷の原 ...
続きを見る
腰部椎間板ヘルニアの症状が気になる人におすすめ
-
腰部椎間板ヘルニアの症状・原因・診断
腰部椎間板ヘルニアとは? 腰椎椎間板ヘルニアは、背骨の間にある椎間板髄核という組織が、飛び出てくる事より、腰の神経を圧迫・絞扼したり炎症を引き起こす事によって神経症状を引き起こす整形外科 ...
続きを見る
椎間板ヘルニアの治療について
基本的な治療法としては、薬物療法、注射療法、手術療法、リハビリなどがあります。
神経麻痺が進行していない場合は、急いで手術をする事はなく、主に保存療法(薬物療法、注射療法、リハビリなど)による経過観察となります。
また、症状が寛解していかない場合は、障害椎間板を見極めるためにブロック注射による治療的診断を行うのが一般的となっています。
神経の炎症を抑える消炎鎮痛剤・ブロック注射
下肢痛の症状は、神経の圧迫という物理的な負荷よりも、神経に炎症が起こる事が問題とされています。
つまり、脊柱管内のMRI上での神経根圧迫所見は変化(改善)がみられなくても、炎症が引いていけば、強い圧迫・絞扼がなければ元の生活に戻れます。
炎症を抑える目的で、「消炎鎮痛剤」を服用したり、ステロイドを混合したブロック注射を用いて局所(腰の神経)の炎症を抑えるように働きかけます。
薬物療法や、注射による治療を用いる理由は、炎症を抑える事です。
ブロック注射は局所麻酔剤のみの場合は、炎症を抑える効果はなく、一時的な神経ブロックのみの効果となります。この場合は、仙骨ブロックであろうと、神経根ブロックであろうと、一時的な効果のみなので、責任病巣を把握するため以外の効果はほとんどありません。
一つの神経に的を絞って局所麻酔を行い症状が寛解すれば、その神経根が症状の原因であったという事が明確になります。
この方法での診断を行う事を機能診断や、治療的診断などと言います。
神経因性疼痛に効く薬
プレガバリン(リリカ)は、神経の働きを抑える事で神経障害性疼痛に効果を示します。
主な副作用としては浮動性めまい、傾眠(眠気)、浮腫、体重増加があり、顕著に副作用が出る人では、酔っ払っているような感覚になり、日常生活動作もままならなくなる人もいるので転倒や車の運転などには注意が必要です。
椎間板ヘルニアの手術療法
主に飛び出たヘルニアによる神経への物理的圧迫が過度な場合や、麻痺が進行している場合などに選ばられる治療方法です。ヘルニアと診断されて即手術となるケースは少ないです。
- ラブ法:古くから行われている最もスタンダードな手術法がラブ法(椎間板切除術)
- 経皮的髄核摘出術
- 経皮的レーザー椎間板減圧術(PLDD)
- 内視鏡下ヘルニア切除術
- 椎体固定術
数ヶ月のリハビリや薬物療法などの保存的な治療法で効果がない場合や、下肢の力が入りにくいなどの「運動麻痺」に進行がみられる場合、殿部会陰部から両下肢への違和感・しびれ症状や、排尿排便に関係する括約筋の機能低下が認められる場合(膀胱直腸障害)などは手術療法が選択されます。
下肢の運動麻痺や括約筋の機能低下は、重症になってからの手術では改善しにくい傾向があるので、腰部椎間板ヘルニアの諸症状の中では早急な手術が考慮されるべき症状です。
椎間板ヘルニアのリハビリ治療
リハビリによる保存療法
椎間板ヘルニアによる症状が強い場合に大切になるのは、日常生活上の姿勢や動作の仕方です。
椎間板に過度な負担が加わりやすい「よくないやり方」になっていないかを理学療法士から指導を受けると良いでしょう。
問題が起こりやすいのは、座位姿勢(椅子座位、車の運転)、荷物の積み上げ動作、洗面時の中腰姿勢などです。
また、症状が強い時期は、クシャミや咳などでもかなりの痛みが出ますが、腰が曲がらないよう姿勢を伸ばした状態をキープして、やや上に向かってクシャミをすると痛みを増悪させずに済みます。
麻痺の影響で弱化してしまった筋肉については、自動運動が可能であれば筋力強化運動を行い、自動運動も難しい場合は電気刺激を併用して行う方法もあります。
術後のリハビリ|後療法
脱出部位に強い圧(椎間板内圧が上がる動作・姿勢)を加えると再脱出の危険性があるので、必ず、手術医に確認をとってから、立ち座りや運動などを行いましょう。
手術方法や、腰椎の構造的な不安定性の有無で、後療法の進行は大きく変わってきます。
一般的には、保存療法と同じような動作・姿勢に関する指導と、体幹筋力強化の運動などを行う事が多いですが、筋力による椎骨の固定は現実的には難しいとされています。
再発の恐れがある病気なので、姿勢・動作指導についてはしっかりと行なっておくことが重要です。
手術をする事になった患者さんのほとんどが神経症状が出現しているはずです。運動麻痺があった場合は、弱くなっている筋肉の筋力強化運動を考慮しましょう。
腰部椎間板ヘルニア患者さんへのアドバイス
椎間板ヘルニアは、腰や脚に痛み・痺れがある人に対してよく診断される整形外科の病気ですが、しっかりと診察もされずに安易に「椎間板ヘルニア」という診断が下っている場合もあります。
ここで解説した記事を読んで、自己判断はよくないので、症状がある場合は必ず整形外科医にみてもらいましょう。
そこで大切になってくるのが、「しっかりと身体検査をしてもらったか?」になります。
椎間板ヘルニアは、MRI検査だけでは分からず、しっかりと身体検査をする必要があります。
ここで言う身体検査とは、反射検査用のハンマーを用いて膝やアキレス腱を叩いて反応をチェックしたり、筋力が保たれているか、感覚に異常がないかを細かくチェックする事です。
もし、身体検査をせずにMRIだけを見て「椎間板ヘルニアです。」と言われた人は、それを鵜呑みにせず、セカンドオピニオンを考えて下さい。
また、治療そのものも大切ですが、不適切な体の使い方や、腰に負担のかかる悪い姿勢などの改善がとても大切です。