妊婦には、腰痛を抱えている人が多く、「実に7割近くの妊婦さんが腰痛を訴えていた」という研究結果もあります。
この記事では、妊婦さんの腰痛の特徴について解説しています。
妊婦の腰痛・骨盤痛の特徴について
妊娠時に腰痛を発症する女性は多くいます。
一般的には、妊婦の腰痛は約7割程度の人が経験すると言われていますが、これを裏付ける研究データがあります。
妊娠時腰痛の発症率、臨床像、危険因子などを調べた、ある研究(分娩後10日以内の褥婦175例に対し、入院中直接腰痛に対する問診および診察を実施)では、妊娠中の方の68%に腰痛を認めたとされています。
そのうち、77.3%が31週までに発症しており、また30歳未満を若年群、30歳以上を高齢群と分けると、各群間の腰痛出現率に有意差は見られなかったとされています。
さらに、分娩歴、腰痛歴、妊娠前後の体重差、妊娠前肥満度、新生児体重についても腰痛出現率に有意差は見られていません。
つまり、この調査から、妊婦の腰痛には、年齢は関係なく、誰でも起こりうるものであり、約70%という割合も妥当なものと考えられます。
この研究のデータでは、初産婦については若年群で有意に腰痛出現率が高かったとされており、また、 分娩直後の診察より仙腸関節部痛が18%に認められたが、その後の追跡調査の結果では、80%は1カ月以内に痛みが消失していたそうです。
妊娠を機に、腰痛を抱える人は多くいますが、「出産後も長く続く腰痛を抱えるお母さん」は決して多くはないようです。
1ヶ月以上続く腰痛に悩んでいるのなら、単に産後だから、、、ではなく、何か問題が潜んでいるのかもしれません。
なぜ、妊娠初期に腰痛になりやすい?
今まで腰痛がなかった人でも、妊娠により体内に変化が起き、腰痛を起こしやすくなります。
そのメカニズムとして、妊娠初期には子宮が大きくなりはじめて、骨盤内の充血が起こる事によると考えられています。
もちろん、妊婦の腰痛は、妊娠初期だけに限定されるものでなく、妊娠中期や、妊娠後期(妊娠末期)にも起こるトラブルです。
徐々に大きくなるお腹の影響で、姿勢に変化が起こり、妊婦特有の腰を大きく反らすような姿勢をとるようになります。
これが、妊婦特有の姿勢性腰痛の理由です。
この姿勢変化に加えて、ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン、リラキシン)の影響によって、背骨の関節・靱帯にゆるみが起こり、骨盤が不安定(ゆるくなる)となります。
ゆるい関節を支えるためには、その関節をサポートする筋肉に、これまで以上の働きを求める必要が出てきます。
妊婦特有の姿勢により腰の反った姿勢ばかりをとるようになる事、ホルモンバランスの影響で関節が緩くなること、それを補うために腰回りの筋肉や脚の筋肉に必要以上の負担がかかる事などの影響により、妊娠する以前の体の状態よりも「腰痛を起こしやすい身体」になっていると言えます。
この他にも、大きくなった子宮による周辺組織への圧迫や、便秘に加え、運動不足からくる腰痛なども考えられます。
妊娠初期の腰痛予防としては、腰が反りすぎない姿勢をこころがけることや、腰の反りが大きくなるようなハイヒールを避ける事、適度な運動を実施し、さらに身体を冷やさないことなどが有効です。
骨盤ベルトや腹帯を巻くことにより、妊婦特有の腰痛が緩和される場合もありますが、「締めれば締めるだけ良い」というものではないので、自己判断でのコルセット着用は十分に気をつけましょう。
「妊婦・妊娠初期の腰痛の特徴」引用文献
Vol. 2 (1996) No. 1 P 22-26
http://doi.org/10.14898/yotsu1995.2.22
妊婦の腰痛
田代 俊之1), 久野 木順1), 蓮江 光男1), 真光 雄一郎1), 鎌田 浩史1), 星川 吉光2)1) 日本赤十字社医療センター整形外科 2) 都立府中病院整形外科