ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)とは?
運動器の障害のために移動機能の低下をきたした状態のことを表す、2007年に日本整形外科学会によって新しく提唱された概念です。
短縮して「ロコモ」と言ったり、少し専門的な言い方になると「運動器症候群」と言われます。
定義としては「運動器の障害により移動機能の低下した状態」となっていて、ロコモ=病気というわけではありません。
例えば、重篤な病気が理由ではなく、運動器の病気や体力的な衰えから、
- 階段や段差を上るのに手すりや支えが必要
- スーパーでの買物が厳しい(15分程度の連続歩行)
- 横断歩道を青信号の間に渡りきれない
- 立ったまま靴下やズボンがはけない、転びそうで怖い
- 家のなかで、つまずいたり、よろける事がある
こういった状態が、「ロコモティブシンドローム」に当てはまります。
この時点で、すぐに問題というわけではありませんが、「寝たきり」や「介護が必要な状態」の前段階と考えられています。
ロコモティブシンドロームは、健康寿命の短縮に繋がる
ロコモは、運動器の病気以外にも、閉じこもり(運動不足)や、加齢によって、筋力・体力・バランス能力などが衰えはじめ、徐々に移動能力の低下が起こります。
ロコモが進行すると、ついには、一人で立って歩いたり、衣服の着脱や、トイレ・入浴など、最低限の日常生活動で必要となる基本的な動作さえも、一人で行えなくなってしまいます。
つまり、ロコモが進行すると、健康寿命の低下へと繋がります。
ロコモの原因とは?
ロコモの原因としては、大きく分けて、
- 運動器の病気(疾患)
- 加齢による運動器機能不全
この二つが挙げられます。
運動器って何?
運動器とは、身体を動かすために関わる組織や器管の総称です。
具体的には
- 骨
- 筋肉
- 関節
- 靭帯
- 腱
- 神経
などから構成されています。
運動器の病気・怪我とは?
整形外科に診てもらうような症状が、運動器の病気(怪我も含む)となります。
例えば、よく耳にするような運動器の病気・怪我としては以下のものが挙げられます。
- 変形性ひざ関節症
- 膝半月板損傷
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 脊椎圧迫骨折
- 変形性股間症
- 足関節捻挫
- 肉離れ
運動器の病気の専門は整形外科
整形外科では、以下のように身体を部位に分けて、分類して運動器の病気を診ていきます。
膝関節 | 膝前十字靭帯損傷、膝半月板損傷、反復性膝蓋骨脱臼、変形性膝関節症 など |
股関節 | 変形性股関節症、大腿骨頭壊死症、大腿骨頚部骨折 など |
足関節 | 足関節捻挫、変形性足関節症、アキレス腱断裂 など |
肩関節 | 五十肩、反復性肩関節脱臼、腱板断裂、野球肩 など |
肘関節 | 野球肘、テニス肘、上腕骨顆上骨折 など |
手・手関節 | コーレス骨折、腱鞘炎、手根管症候群、母指CM関節症 など |
脊椎 | 変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、脊椎圧迫骨折、後縦靭帯骨化症 など |
特に、腰や足(下肢)の運動器の病気や怪我は、移動能力の低下、つまり「ロコモ」に直結する病気(疾患)となります。
加齢による運動機能不全について
ロコモの原因のもう一つは、運動機能不全です。
運動器は説明した通りですが、この「骨」「関節」「筋肉」などの運動器が、加齢によって変化(老化)を起こす事によっても起こり始めます。
例えば、身長の変化や、円背などに伴う姿勢の変化、骨や関節の変化などが、加齢による運動機能不全と捉える事ができます。
運動器に疾患を抱えていない場合でも、老化とともに筋力低下や、柔軟性の低下が起こります。
他にも、俊敏性・平衡性の変化や、歩行スピードの低下、リズム運動困難などが現れ、運動機能の弱化が起こります。これが、進行するとロコモとなるわけです。
ロコモは、加齢だけが原因ではありませんが、加齢とともにそのリスクは増していくと言えます。
【ロコモ度テスト】
ロコモティブシンドロームをチェックしましょう!
ロコモは少しずつ進行します。
ロコモが気になる方は、日本整形外科学会が出している、自分でロコモをチェックする「ロコモ度テスト」を活用して、自分がロコモに当てはまるかを確認してみてください。
ロコモ度テスト
ロコモ度テストとは 「ロコモ度テスト」は以下の 3 つのテストで成り立っています。
- 下肢筋力判定方法:「立ち上がりテスト」
- 歩幅判定方法:「2 ステップテスト」
- 身体状態・生活状況判定方法:「ロコモ 25」
引用:https://www.joa.or.jp/media/comment/pdf/20130528_locomo_test.pdf
下肢筋力判定方法:「立ち上がりテスト」
引用:https://www.joa.or.jp/media/comment/pdf/20130528_locomo_test.pdf
①40cm台から片脚立ち上がりができるか、②20cm台から両脚立ち上がりができるかをチェックしてください。
結果
- どちらから一方の片脚で40cm台から立ち上がれないとロコモ度1
- 両脚で20㎝の高さから立ち上がれないとロコモ度2
歩幅判定方法:「2 ステップテスト」
引用:https://www.joa.or.jp/media/comment/pdf/20130528_locomo_test.pdf
立ち止まった状態から、大股歩きの2歩目までの距離を出します。
2歩目までの距離がわかったら、下の公式に当てはめて、「2ステップ値」を出しください。
2ステップ値 = 2歩幅(cm) ÷ 身長(cm)
結果
- 2ステップ値が1.3未満でロコモ度1
- 2ステップ値が1.1未満でロコモ度2
身体状態・生活状況判定方法:「ロコモ 25」
ロコモ25は、25の質問項目からロコモ度をチェックするものです。
回答が点数となり、合計点数により判断します。
引用:https://www.joa.or.jp/media/comment/pdf/20130528_locomo_test.pdf
質問票をもとに、合計点数を出してください。
結果
- 7点以上でロコモ度1
- 16点以上でロコモ度2
ロコモ度1、ロコモ度2
ロコモ度1は、移動機能の低下が起こり始めている状態です。
筋力やバランス能力が落ちているので運動を習慣づける必要があります。
栄養もしっかりと摂る事を心がけてください。
ロコモ度2は、移動機能の低下が進んでいる状態です。
自立した生活を送れなくリスクが高まっているので、ロコモ対策が必要です。
運動器疾患を有しているか、単なる運動不足かによって、ロコモ対策が変わります。
ロコモ対策
ロコモ度テストでひっかかった方で、痛みがある人や運動器の病気(疾患)がある人はその治療が重要になります。整形外科専門医の受診をおすすめします。
また、運動不足や体力の衰えが進行している人は、日常生活の中に、少しずつ運動を取り入れながらロコモが進行しないように対策を行なってください。