四辺形間隙症候群(外側腋窩隙症候群)とは?
腕の付け根に「四辺形間隙(QLS:Quadrilateralspace)」と呼ばれる複数の筋肉に囲まれた小さな隙間があります。この隙間を腋窩神経と後上腕回旋動脈が通過しています。
この隙間で腋窩神経が挟まれて(絞扼されて)神経性の症状を引き起こします。これが、四辺形間隙症候群(QLSS:Quadrilateral spacesyndrome)です。
四辺形間隙は外側腋窩隙とも呼ばれ、腋窩神経が絞扼された場合も同様に外側腋窩症候群と呼びます。四辺形間隙症候群と外側腋窩隙症候群は、同様の病気を指す言葉です。
四辺形間隙症候群(外側腋窩隙症候群)の症状
腋窩神経が絞扼される事によって起こる肩外側の痛みとしびれが主な症状です。
四辺形間隙のスペースを狭める投球動作や、手を高く挙げる動作の持続などで起こる運動時痛も特徴的な症状の一つです。
症状が強くなると、反対側(問題のない側の肩)と比較して、手を高く挙げにくくなる場合もあります。
野球のピッチャーの場合では、「球を強く投げれない」などの投球障害(野球肩)を起こす場合もあります。
四辺形間隙症候群(外側腋窩隙症候群)の原因
この四辺形間隙は、上方を小円筋、下方を大円筋、内方を上腕三頭筋長頭、外方を上腕骨縁によって構成されます。
この間隙を通る腋窩神経や後上腕回旋動脈が、間隙の狭まりによって締め付けられて症状を発症します。
間隙を狭める要因としては、小円筋、大円筋、上腕三頭筋の使いすぎ(主に過剰なトレーニングによるもの)があげられます。
腋窩神経の締め付けが四辺形間隙症候群(外側腋窩隙症候群)の症状の主体と考えられており、専門的には「腋窩神経の絞扼」と言います。
なお、広背筋は、直接的には四辺形間隙を作りませんが、大円筋に隣接している大きな筋肉のため、広背筋の過緊張や短縮が、腋窩神経の絞扼に影響する場合もあります。
動作としては、手を挙げた状態で腕をひねる動きを繰り返す事によって、四辺形間隙が狭まります。
例えば、野球の投球動作において、肩関節外転位での内外旋運動を繰り返すことが原因になります。
その他、上腕や背中の過剰な筋トレにより、筋肉のボリュームが増加しすぎる事によって、四辺形間隙を狭めてしまい発症するケースもあります。
四辺形間隙症候群(外側腋窩隙症候群)の診断
レントゲンには映りません。MRIなどの詳しい画像検査を行うと分かる場合もありますが、画像検査では分かりにくい整形外科疾患の一つです。
症状の特徴と、これまでの経過に加えて、神経学的所見をもとに診断されます。
例えば、「腕の筋トレを多く行なっている。」「投球練習を沢山繰り返してきた。」という人が、肩の外側の痛みを訴える場合は、四辺形間隙症候群(外側腋窩隙症候群)を疑います。
神経学的検査としては、
- 肩の外側の感覚が鈍くなっていないかをチェック→痛覚や触覚の低下がある。(感覚鈍麻あり)
- 左右の肩や腕の外観をチェック → 細くなっている。(腋窩神経が神経支配する「三角筋」の萎縮あり)
などの所見があれば、四辺形間隙症候群(外側腋窩隙症候群)が強く疑われます。
ただし、①肩の外側の感覚障害や、②三角筋の萎縮といった所見は、他の原因による場合も多くあります。
例えば、頸椎疾患でも起こるため、他の似ている病気(頸椎ヘルニアや、後縦靭帯骨化症など)の除外診断をしっかりと行う事が重要となります。