その腰痛、“産後だから仕方ない”で終わらせていないか  ―整形外科PTが知っておきたい産前産後の視点―

産後の腰痛。

沖縄の整形外科外来でも、決して珍しくない。

でも正直どこかで、
「産後だしな…」と、思考が止まっていないだろうか。

妊娠中に反り腰になり、靭帯が緩み、骨盤が不安定になる。
だから腰が痛い。

そこまでは多くの理学療法士が理解している。

問題は、その先だ。

自費サロンは増えているけど、
全員が通えるわけではない。

だとすると、
整形外科が“最初で最後の相談先”になっているケースもあるんじゃないか。


教科書的理解と、臨床のズレ

教科書的には、

・妊娠中はリラキシンなどの影響で靭帯が弛緩
・腹部膨隆により腰椎前弯が増強
・産後は組織が回復し、症状も軽減する

という“自然回復モデル”が前提にある。

構造変化が落ち着けば、機能も戻る。
理論としては理解できる。

だが臨床ではどうだろう。

回復時期を過ぎても痛みが続く人は、一定数いる。


「反り腰」で止まっていないか

産後腰痛=反り腰。

そこで思考が止まることはないだろうか。

・胸郭の可動性はどうか?
・呼吸パターンはどうなっているか?
・腹圧はどこに逃げているか?
・骨盤帯の安定戦略は?

同じ産後3ヶ月でも、

触診で明らかに支持性が低いタイプと、
過剰な代償で安定を作ろうとしているタイプでは、
戦略は全く変わる。

反り腰という姿勢所見だけでは、判断はできない。


沖縄という地域背景

さらに沖縄の生活背景も無視できない。

・車社会で歩行量が少ない
・抱っこ移動が多い
・多子世帯
・サポートが十分とは限らない家庭環境

“回復”と同時に、慢性的な負荷が上乗せされていないか。

組織が回復しても、
機能が再構築されているとは限らない。

「様子を見ていたら半年経っていた」
というケースも、決して少なくない印象がある。


組織回復か、機能再獲得の遅れか

ここが分岐かもしれない。

時期の問題として見るのか、
機能再獲得の遅れとして見るのか。

私が意識しているのは、

  1. 組織回復時期をどう解釈するか

  2. 育児負荷を具体的に聴取できているか

  3. 家庭環境(サポート状況)を把握しているか

  4. 呼吸と腹圧の協調

  5. 骨盤帯の安定戦略

産後腰痛を、
「妊娠による一時的な不安定性」
としてだけ見るのではなく、

ホルモン × 腹圧 × 胸郭 × 骨盤帯 × 生活負荷(地域背景含む)

というシステムで見る。

リラキシンを知っていることと、
目の前の生活の中で何が積み重なっているかを推論できることは違う。


「産後だから仕方ない」で止めない

産前産後は専門領域。

自分は整形外科だから関係ない。
そう思った瞬間、臨床推論は止まる。

沖縄では、他に頼れる場所が少ない可能性もある。

だとすれば、
ここでの評価の質が、その人の数か月を左右することもある。

地域背景も含めて考えたとき、
ウィメンズヘルス視点を入れるだけで救えるケースがあるかもしれない。

断定はできない。

でも、
「仕方ない」で終わらせる前に、もう一段だけ考えてみる。

その積み重ねが、
沖縄の整形外科現場を少し変えるのかもしれない。

執筆:久場島 紅(理学療法士/あかみち整形外科リハビリクリニック)

監修:比嘉 俊文(理学療法士/G’hands 代表)

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