当記事は、セミナーに参加した方々が、「参加したままで終り」とならないように、めでぃまーるからのセミナー受講生へのサポートコンテンツという位置付けで制作されています。編集部による一部注釈を加えたり、配布されなかった情報・資料などを掲載していますので、セミナー受講生は、配布されたセミナー資料を振り返りながらご活用ください。

運動器外来 ”理学療法臨床力”【2018-6-10】

筋膜機能に基づいた肩こりに対するジーハンズコンセプト

更新日:

講師紹介:比嘉先生について

比嘉 俊文 (ヒガ トシフミ)
理学療法士
Physio salon G’hands
合同会社 Medimarl 代表

ゆいちゃん
UPDRAFT、合同会社Medimarlで代表を務めている比嘉先生です。 これまでの整形外科クリニックでの臨床経験と、自身が運営しているジーハンズでの経験をもとに、「筋膜」を主テーマとしてお話し頂きました。 また、沖縄の健康面を考え、療法士の活躍できる手段を模索していくUPDRAFTの今後の方向性についてもお話し頂きました。

 

導入:セラピストに求めらえる臨床能力

Dr.カール先生
以前のセミナーでは、痛みをみていく上での「鑑別力の重要性」でしたが、今回はその続編として、「徒手介入」についてもう一歩踏み込んだ技術的な部分についてもお話して頂きました。

導入部分では、

  • 徒手介入(技術)の前提としてあるべき「鑑別力・人間力」についての話
  • 代議員総会に参加した際の半田会長の自費診療への発言

などにも触れながら、

自身の、これまでの理学療法士としての臨床への向き合い方や、現在、起業しているセラピストの一人として、医療と整体業の繋がりなどからスタートしていきました。

理学療法士・作業療法士が、独立して起業(整体など)した場合、

サービスの対象者となるのは、身体の不調をサポートしてほしいという要望がある人という意味では、病院の患者層と似ている部分もありますが、整体へ訪れる方の中には『病院に行っても問題なしと言われて困っている人』が多く存在し、そういった方々への身体の不調へのアプローチについても考える必要があると説明がありました。

 

病院勤務時代と、独立して整体業を営む理学療法士という二つの経験をもとに、医療機関で痛み症状のリハビリテーションに従事している理学療法士・作業療法士に向けて、「病気」に着目した介入だけに終始するのではなく、その奥に隠れた原因を探していく事も重要である事を説明した上で、

  • 病名は考慮するが、病名に介入しているわけはない。
  • 病名イコール原因ではない。

という説明がありました。

 

ジーハンズのコンセプトは「筋膜」

ジーハンズでは、「痛み」について、多くの要因に目を向けているが、筋骨格系の痛みの原因の一つである「筋膜」に特化してアプローチしているのが特徴・コンセプトの一つです。

その理由として、

  1. 筋膜調整など、結合組織のバランスを整えると症状に変化が起こる事
  2. 飲水後のランニングで脇腹に痛みが出たりする → 胃への内容部増加によって胸腹膜系に負担がかかった痛みの可能性

といった現象について説明し、さらに「人が痛みを感じる解剖学的部位のほんとんどがファッシア」という説明なども交えながら、セラピストとして、筋膜へ着目する理由についての説明がありました。

 

筋膜治療の考え方

筋膜を評価する上で、筋膜への機械的刺激への反応や筋膜の硬さをみていくのですが、これは俗に言う「圧痛点」というよりも、「線や面」として捉えています。

そして、筋膜と一言でまとめていますが、解剖学的な主な対象としては、「深筋膜」や「筋外膜」であり、

  • 深筋膜と筋外膜
  • 筋外膜と筋外膜

という、筋膜組織間の機能障害にも着目して介入しています。

理由としては、「深筋膜」や「筋外膜」には、受容器が多く含まれていて、機械的刺激(張力)により反応する「パチニ小体」や、「自由神経終末」が豊富である事が、筋膜が痛みの原因になりうるという神経生理学的な要因が根拠となっています。

 

筋膜に機械的刺激を加えると何が変わるのか?

筋膜への介入による変化の理由には、「ヒアルロン酸」の存在が大きく関わっています。

 

まずは、悪くなる理由についてですが、

  • 過度な運動
  • 外傷
  • 廃用(外傷歴による維持的な固定なども含む)

こういった事がきっかけで、「組織密集化、脱水、血流不全」などが起こります。

つまり、筋膜への介入の視点は、「組織密集化、脱水、血流不全」を正常な状態に戻す事にあります。その働きかけとして、徒手的な介入があります。

 

筋膜への徒手的な介入は、単純ではない。

筋膜の機能を考慮すると、「包装」「保護機能」「支持機能」「通路」があります。

「包装」とは全身を筋膜が包み込み、個々の構造を分けると同時に結びつけている筋膜の機能の一つです。

この一例として、斜角筋部の痛みが大腿筋膜張筋と繋がりを考慮して、大腿筋膜張筋へ介入すると、斜角筋部の痛みに変化が生まれるケースの説明がありました。

両者に解剖学的・生理学的な繋がりが存在するためであり、「硬くなった大腿筋膜張筋が、斜角筋部の緊張を高めている可能性」を考える事ができます。

これは、筋膜が全身を包装する事を説明する良い例だと考える事ができます。

 

しかし、硬くなっている筋膜に対して、「硬いのが問題だ!」という事で、単純にほぐす事に終始すると、かえって症状を悪化させてしまう可能性があります。

それは、筋膜の他の機能である「支持機能」を妨害するリスクがあるためです。

もし、支持するために硬くなっていた部分を、セラピストによる外的な刺激によって強制的にほぐしてしまうと、支持機能としての役割を妨害する事になり、余計に身体が重くなったり、症状を悪化させてしまう可能性があるというわけです。

筋膜の機能を理解すれば、「硬いところをほぐせば良い」というアプローチが危険な行動である事が分かります。

ゆいちゃん
「全身の繋がりを考慮した評価」を行わない筋膜への介入は、症状をよけいに悪化させてしまうリスクがある事を理解しておく必要があります。

 

関節モビリゼーションと筋膜へのアプローチの違いとは?

比嘉先生による「関節モビリゼーション」と「筋膜へのアプローチ」の視点の違いとして、一枚のテントの写真を用いての解説がありました。

テントが傾いた状態が機能障害で、その傾きを修正させる事がアプローチとした場合、

その手段として、

  1. 中心の軸(赤)をコントロールすること
  2. テントの張り具合(青)をコントロールすること

この二つの方法で、テントの傾きを修正する事ができます。

 

関節を操作する関節モビリゼーションなどの手技が、中心の軸をコントロールする方法(1)として捉え、筋膜に対する介入は、テントの張り具合をコントロールする方法(2)として捉える事ができます。

この二つの方法は、どちらが正しいとか、どちらが優れた方法か、といった排他的な関係ではなく、個々の状態や反応の仕方・経過に合わせて適宜介入方法を変えながら対応していく必要があります。

Dr.カール先生
これについては、多くの臨床家の間でも、「どちらが正しいか?」ではなく、「何に反応するのか?」を見極める事が重要であるとされています。もちろん、セラピストの得意・不得意もあるので、そういった影響も出る部分かもしれません。

 

ここまでが、座学を中心とした、介入に対する考えた方や、筋膜についての基礎知識に関するものでしたが、ここからは、筋膜の評価方法について実際の方法論に入っていきます。

 

ここからは、「筋膜をどう評価するのか?」についての実技を交えた解説

前半は、座学中心の内容でしたが、講義の後半からは受講生も一緒になって、「筋膜に介入する事により身体の動きに変化が起こる事」を体感してもらうための実技が行われました。

受講生は隣や前後の人同士でペアを組み、比嘉先生の説明を聞きながら、筋膜の評価手順のレクチャーを受けているところです。(上写真)

セミナーでは、時間的な制限もあるという前提で、比嘉先生が実際に用いている頚肩部痛患者への筋膜評価法の流れを説明して頂きました。

 

今回の実技練習のおさらい

まずは、症状・主訴の確認

筋膜を操作する事によって、身体の動き・症状に変化が起こるという事を体感してもらうために、介入前の状態を把握しておきます。

介入前の状態と介入後の状態に違いが生まれるかを判断するためです。

通常の臨床であれば、患者の訴える症状が対象となりますが、この場での練習は、実際の患者ではなく、セラピスト同士となります。

なので、もし「肩こり」があるという方は、その肩こり症状をアプローチ後に確認する仮主訴とし、

痛みがない人の場合は、

頚部の側屈・回旋などを各自でチェックして、動きの制限(左右差)が認められれば、その運動制限を仮主訴(「右に首を向けづらい」など)としてください。

 

次は、頚部の代表的な筋の圧痛を評価

次は、セラピスト役の人が、圧痛の有無を確認していきます。

ここでのポイントは、相対的にもっとも圧痛がみられるところをチェックします。

  1. 脊柱起立筋(c5-7)
  2. 斜角筋と胸鎖乳突筋の溝
  3. 肩甲挙筋と頭板状筋の溝

複数ある人の場合は、もっとも痛いところがどこかを確認します。圧痛がみれない場合でも、3つの点を比較しながら、どこにより圧痛感を感じるかを確認して下さい。

この圧痛点は、その部位とは一見関係のないところにアプローチしたあとに、圧痛の強さが変化していくかをみていきます。

ゆいちゃん
①仮主訴と、②頚部の圧痛点の変化を、筋膜介入前後のプレ・ポストテストとするわけです。介入後の変化を確認するためにも、この二つをしっかりと確認しておく事が重要ですよ。

 

仮主訴と頚部圧痛点を確認できたら、次は「スクリーニング動作検証」

筋膜が全身で繋がっている事については、すでに説明していると思います。ここでは、仮主訴や頚部の圧痛点が、骨盤からの影響が強い人なのか、頚部からの影響が強い人なのか等をスクリーニングによって評価(振り分け)していきます。

方法としては、以下の方法で、仮主訴に変化が出るかをチェックします。

  • 腰部骨盤領域のスクリーニング:骨盤の前後傾
  • 頭部領域のスクリーニグ:開口・閉口による変化
  • 手部領域のスクリーニング:手背部の圧痛点

※ こちらは、配布資料には無かった手部領域のスライドです。▽

(クリックで拡大します。)

 

変化が分かりにくい人の場合は、何回か繰り返し比較しながら、仮主訴や圧痛点の状態が変化する部位を探していく必要があります。

 

スクリーニング結果

腰部のスクリーニングに反応がみられた人は、腰部からの介入を試みます。同じように、頭部領域や手部領域へのスクリーニングに反応がみられた場合は、それぞれの部位へとアプローチへと進めます。

つまり、腰部の関与の疑いがあった人は腰部の圧痛点の有無をチェックします。

開口・閉口に変化のあった人は、頚部の圧痛点をみていきます。

なお、全ての圧痛点をチェックするのではなく、圧痛点が特に強かった部位の番号と一致する筋肉の圧痛をチェックして下さい。

 

骨盤・腰部領域で陽性の場合

  1. 脊柱起立筋(l1-3)
  2. 腰方形筋
  3. 外腹斜筋(12rib1)

開口など頭部領域で陽性の場合

  1. 前頭金(眉毛の内側)
  2. 咬筋(もしくは側頭筋)
  3. 乳様突起

手部領域で陽性の場合

  1. 小指外転筋
  2. 第1背側骨間筋
  3. 第2〜4中手骨間隙
ゆいちゃん
例えば、②斜角筋と胸鎖乳突筋の溝に圧痛点があった人で、骨盤領域のスクリーニングで陽性だった人の場合だと、ここで示した②腰方形筋が介入ポイントとなります。

該当する番号と一致する部位の圧痛の有無を調べながら、圧痛点があれば、その圧痛点にアプローチします。

圧痛そのものがない場合は、当該筋肉に対して、マッサージ治療(ここでは本人が得意する治療法で構ない)を行ってみて下さい。

 

一つの分かりやすい指標として「圧痛」という言葉を用いていますが、圧痛を消すというよりは、その部位の「ヒアルロン酸の状態を変化・改善させること」が目的です。

そして、アプローチ後に、最初に確認した頚部の圧痛や、運動制限などの仮主訴が変化するかをチェックしていきましょう。

 

ここまでが実技を交えた筋膜の評価方法や介入方法についての説明でした。

 

最後に

セミナーでは、実際に変化がみられた方も、みられなかった方もいたかと思いますが、これは絶対に効く方法という意味での紹介ではなく、比嘉先生のこれまでの経験の中で、比較的多いパターンの一つとして紹介していました。

(受講生の6〜8割に反応がみられる事を想定して、実技練習の内容を構成したとの説明もあったかと思います。)

 

そして、この実技練習は、紹介した方法を習得する為というよりも、「離れた部位にアプローチして、実際に変化が起こる」という現象を体感する事により、「今後の臨床の一視点になれば良い」という事をおっしゃりました。

つまり、セミナーの冒頭にもあったように、病気だけをみるのではなく、「全身の状態をみる視点」の必要性に気付くきっかけになってほしいとのことです。

 

最後に、もう少し筋膜について深く学びたい人に向けた情報を紹介しながら、終了となりました。

 

比嘉先生ありがとうございました。

 

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