健康・医学の基礎知識

「痛み」には種類がある。

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「今日は、やたらと腰が痛いなーーー。」

朝起きた時に、いつもとは違う腰の違和感や痛みを感じた事はありませんか?

多くの場合、人は痛みを感じると、体のどこか(特に痛みを感じる場所)が、傷んでいる・怪我をしていると考えてしまいます。

無理をしたせいで、腰を傷めたのかな?と思うと、その後にとる行動は、「安静」をとってしまうのではないでしょうか?

 

もちろん、無理のしすぎで腰を傷めているのなら、回復を待つために「安静」が必要です。

ただし、この場合は、傷めた組織がある場合であって、「痛い」から「安静」ではないのです。

 

痛い=怪我ではない!

「痛い」という感覚には、いくつかの種類がある事が分かっています。

  • 侵害受容性疼痛(しんがいじゅようせいとうつう)
  • 神経障害性疼痛(しんけいしょうがいせいとうつう)
  • 心因性疼痛(しんいんせいとうつう)
ゆいちゃん
侵害受容性疼痛と、神経障害性疼痛の違いについて簡単に説明を加えます。

 

侵害受容性疼痛とは?

転んだり、脚や腕をどこかに強く打ったりすると、「痛い!」と感じます。

足首を捻ったり(捻挫)、打撲したりした時に出る痛みも同じタイプの痛みで、誰もが日常生活でよく経験する痛みの種類です。

なぜ「痛み」を感じるのかと言うと、組織損傷が起こるほどの強い負荷が加わった時に、「このままだと怪我をするから、その負荷(衝撃)からは逃げた方が良いよ!」という事を自分自身に教えてくれる危険信号を送るためです。

また、既に組織損傷が起こってしまった時には、修復されるまで無理をさせないように、他のからだの部位よりも、痛みに敏感な状態を作る働きもします。

損傷している部位は、他よりも弱い状態なので、より痛みに過敏である必要があるというわけです。

「捻挫をして足首を傷めた時に、その後1週間くらいは、体重をかけるだけでも痛い。」というのが、侵害受容性疼痛です。

Dr.カール先生
捻挫の状態が良くなってしまえば、いつの間にか痛みも消えていたという経験を持っている人も多いのではないでしょうか。

 

神経障害性疼痛とは?

正座をしていると、脚にじんじんとしたシビレや、チカチカとしびれるような痛みを感じた経験は誰でもあると思いますが、このような痺れや痛みが神経性の痛みの代表的なものです。

正座後のしびれは、一時的なものですが、神経を強く傷つけてしまうと、このしびれが持続する場合があり、これを神経障害疼痛と呼びます。

神経障害性疼痛の特徴の1つとして、障害を受けている部位と痛みを感じる部位が離れていることもあります。

代表的な神経障害性疼痛には、帯状疱疹(ヘルペス)の後に残ることのある神経痛、椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛、けがや手術で神経を傷つけたあとに起きてくる神経痛、などがあります。

これは、神経のケーブルに直接的な負担が加わって傷めた場合の話ですが、神経のケーブルを直接損傷した事が理由ではない神経障害性疼痛もあります。

炎症が長く続いた事などを理由に、痛みを感じる神経が過敏になっている状態が持続した事によって起こる神経障害性疼痛というものがあります。

先ほどの侵害受容性疼痛のところで説明した、

「捻挫をして足首を傷めた時に、その後1週間くらいは、体重をかけるだけでも痛い。」

という侵害受容性疼痛が、1週間を過ぎてもほとんど治らずにずっと続いてしまっている場合は、神経障害性疼痛となっている可能性があります。

ここでの問題は、神経が過敏になっている状態が問題であって、捻挫で傷めた部分は既に治っている場合があります。

 

「痛い」から、「治った」までの経過

治療は原因によって変わってきます。

もし、痛みの種類が侵害受容性疼痛で、なおかつ強い組織損傷がなければ、人の体には修復機能が備わっているので自然に組織が修復されるのを待つ事が治療になります。

錦織圭選手が、手首の損傷で今季残り試合全戦を欠場となってしまった事を知っている人は多いと思いますが、錦織圭選手が選んだ治療の方法が、まさに「休養(安静)」です。

長い間、過酷な大会スケジュールの中で酷使された手首を、「手術」ではなく、「休養」によって、人の体に備わっている修復機能により回復するのを待つという治療です。

こういった、怪我(使いすぎも含め)による痛みは、何らかの身体の組織の炎症(赤くはれて熱を持つ)が原因となっていることが多いです。

このような痛みの対処方法は、

  • 安静にする
  • 冷やす
  • 痛み止め(内服薬、湿布)

などが効果を発揮し、組織の治癒とともに、徐々に痛みが引いていきます。

もし、組織損傷が強い場合は、手術治療をする場合もありますが、日常的に起こる侵害受容性疼痛のほとんどの治療は、「すぐに手術を選択する」という事はなく、自然に組織が修復されるのを待つ事が多いです。

しかし、なんらかの原因で痛みが慢性化すると、痛みを引き起こした原因(組織損傷、怪我など)がなくなっても、痛みが残ってしまう場合があります。

また、痛みが続くことで、「痛み」にばかり注意が向いたり、痛みを過度に恐れてしまったり、痛みを気にして眠れなくなったり、という状態が続くと、ますます痛みにとらわれてしまい、組織は修復されつつあるけど症状は重くなるという悪循環に陥ることもあります。

これまでの痛み対処法は、痛み=安静にすべきという考えが一般的でしたが、この痛みの悪循環に陥っている状態の場合には、安静によってかえって痛みをさらに強くするとされています。

その理由の1つに、

「痛みは、交感神経の緊張と運動神経を興奮させ、血管の収縮や筋肉の緊張を起こす。」

というものがあります。

痛みによって交換神経が緊張

血行が悪くなる

痛みを起こす物質が発生

痛みが持続

痛みによって交換神経の緊張が持続

(痛みの悪循環)

 

通常であれば、痛みが生じても、交感神経の反応はすぐにおさまり、血行が改善されて、痛みが鎮まります。

しかし、痛みが長引いてしまったせいで、血行が悪くなり、痛みを起こす物質が通常より多く発生するようになります。

この「痛みを起こす物質」が、周囲の血管を収縮させた結果、さらに血行を悪化させ、痛みを起こす物質が持続発生するという『痛みの悪循環』を引き起こしてしまいます。

 

痛くても動いた方が良い?

ここが非常に判断を難しくさせるところで、多くの慢性の痛みを抱えている患者さんが悩むところだと思います。

痛みは慢性化する前に、適切な対処が必要で、「どんな痛みでも、無理して動いた方が良い!」というように単純なものではありません。

もし、既に慢性化している場合は、痛みの種類を見極めながら、必要に応じて体を動かしたり、痛みが起こりにくい方法で運動する方が、効果が高い場合が多くあります。

 

「痛み」には種類がある。のまとめ!

怪我をした時には、回復を待つための安静は大切ですが、「痛み=安静」ではありません。

組織損傷が認められず、慢性化してしまった痛みは少しずつ動かした方が、過敏な神経の働きを抑えられる場合があります。

外傷(怪我)や、運動のしすぎなどで痛めたわけではない場合、痛み出した最初は安静にして活動量を落としても、

「安静にしたところで痛みが消えるわけではない」という事が分かったら、徐々に活動量を上げる方向にシフトする方が予後が良いとされています。

痛みが強い場合は、自己判断で運動を行うのは危険なので、一旦、専門の医療機関を受診し、「大きな問題はないか」を診てもらって主治医の判断を仰いで下さい。

 

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