腰部椎間板ヘルニア

腰部椎間板ヘルニア

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Dr.カール先生
理学療法士・作業療法士なら日常的に診る事の多い「腰部椎間板ヘルニア」ですが、病態の理解があいまいになっている人も多いのではないでしょうか?かなり詳しく調べてまとめているので、良かったら参考にして下さい。

椎間板ヘルニアの症状や原因、治療法について詳しく解説

※ 1〜5は医療従事者向けの内容になっています。

  1. 症状・特徴
  2. 原因・病態
  3. 診断方法
  4. 治療
  5. リハビリ
  6. 患者さん向けアドバイス

 

椎間板ヘルニアの局在は以下のように分類されていますが、ここでは、一般的な後外側型の腰部椎間板ヘルニアについて解説していきます。

後正中型 central type 15-20% 正中型
後外側型 posterolateral type 70-80% 傍正中型
椎間孔内外側型 intraforaminal type,lateral 少数 椎間孔、外側型
椎間孔外外側型 extraforaminal type,far-lateral 少数  椎間孔外型

1.椎間板ヘルニアの症状・特徴

腰椎椎間板ヘルニアは、椎間板の髄核という組織が、腰の神経を圧迫し炎症を引き起こす事によって神経症状を引き起こす整形外科疾患です。

椎間板ヘルニアになりやすい人

20~40代の男性に多いとされています。運搬業やトラック運転手のほか肉体労働に就いている人が男性に多いという理由が考えられます。

重たい荷物の積み下ろしや、トラックを運転する時の姿勢と車の大きな揺れなどによって、椎間板圧をより高め、またその姿勢の持続や繰り返しが椎間板線維輪の損傷を招くと考えられています。

主な症状

殿部や殿部から太ももの外側、下肢後面痛と痺れを主な症状として、腰痛はあったとしても下肢痛の方が強い症状である場合が多く、

下肢痛・しびれは「坐骨神経痛」と呼ばれる片側下肢後面(坐骨神経支配領域)に症状をきたします。

その他、運動麻痺による筋力低下や、感覚障害(感覚低下・消失、異常感覚)などを呈します。

筋力低下は最初は気づきにくいレベルから始まる事が多いですが、スリッパなどを履くとズリ落ちたり、地面に足先がひっかかりやすくなって自覚し始める事が多いです。

姿勢・動作などへの影響

痛みの程度にもよるが、背骨が横に曲がって腰をまっすぐ伸ばせない状態(疼痛性側弯)になる事もあります。

また、座位姿勢の持続を嫌がったり、しゃがみ込み動作や低い所から物を持ち上げる動作を苦手(その時に強く痛みが出現する)とする事が多いです。

腰を伸ばすと楽という人もいますが、急性期の症状が強い時期は、あらゆる姿勢で下肢痛・腰痛を訴えます。

膝を伸ばして前屈するような姿勢で、もっとも強い症状を再現できる場合が多いです。

痺れ・感覚障害がよく起こる部位

下腿(膝関節から下側)の外側面〜後面、足背(足の甲)に、痺れや感覚障害を訴える事が臨床的に多いです。基本的には片側下肢の症状のみを訴えます。

 

2.椎間板ヘルニアの原因・病態

椎間板は線維輪と髄核でできています。椎間板の線維輪が損傷して、中にある髄核が出てきて神経を圧迫して症状が出るのが椎間板ヘルニアの病態です。

損傷の原因としては、椎間板が加齢などにより退行変性した結果だったり、悪い姿勢や作業などによって過度なストレスを加えた事によって起こります。

たった1回の強い負担よりも、持続した負担やその反復によって椎間板は損傷を受けます。転落などの急激な負荷には比較的強いので、その時に損傷を受けるの椎骨(椎体)の方が多く、圧迫骨折や椎体破裂骨折となります。

3.椎間板ヘルニアの診断方法

患者本人の訴える症状や問診の結果と、「神経学的所見」「画像所見」が一致するかで診断が決まります。

MRIで椎間板ヘルニアを示す画像所見があったとしても神経学的所見や症状と一致しない場合は「無症候性ヘルニア」である可能性が高いです。

整形外科的テスト・徒手検査

椎間板ヘルニアの診断において最も重要とされているのは、SLRT(エスエルアールテスト、下肢伸展挙上試験:膝を伸ばしたまま下肢を挙上し坐骨神経痛の出現を見る)とされています。

SLRTは70°以下で陽性だが、症状側のみで陽性である必要があります。ハムストリングスの硬さによる影響などを考慮するために、ブラガードテスト、シカールテストなどの関連検査も組み合わせ行います。

症状反対側のSLRTで、症状側の腰下肢痛を再現できた時は、クロスSLRサインと言って、椎間板ヘルニアである可能性をより高い(特異度90%)とされています。

神経学的検査

  • 運動検査
  • 感覚検査
  • 反射検査

神経学的検査では、下肢の感覚が鈍いかどうか(感覚障害)、足の力が弱くなっていないか(運動麻痺)等を確認します。

「痛みが出ている所の感覚や筋力がどうなっているか」ではなく、「神経根障害を思わせる所見が出ていないか」を確認します。

一般的に用いられる検査項目を、整理したものが以下の表です。

L4 L5 S1
責任椎間 L3/4 L4/5 L5/S
腱反射 膝蓋腱 (−) アキレス腱
感覚障害 膝の内側から下腿の内側

母趾

下腿外側から足の甲(足背)

足趾Ⅱ〜Ⅳ

下腿後面

小趾

筋力低下 大腿四頭筋 前脛骨筋

長母趾伸筋

長趾伸筋

下腿三頭筋

長母趾屈筋

長趾屈筋

感覚障害が軽度の場合は、針を使用して痛覚検査を丁寧に行わないと確認できない事が多いです。

触覚検査用の筆で、軽く触れて左右差を比較する方法だと、微細な感覚障害を抽出できていない可能性があります。

また、触覚の場合はデルマトームの重複があるため、そういった理由からも神経根障害の有無を評価する場合は痛覚検査が重要となってきます。

Dr.カール先生
ポイント解説

椎間孔から出てくる神経根と、障害を受ける椎間板は違うので気をつけて下さい!椎間孔から出る前の、一つ上の高位の脊柱管最外側部で圧迫・絞扼を受けた後に、当該椎間孔から出てきます。

例えば、L5の神経根が出てくる椎間孔は、L5/Sの椎間孔だけど、神経を圧迫(絞扼)する椎間板はL4/5です。これは、MRIを確認する時に重要になってくるのでしっかり理解して下さい。

もし、L5/S椎間孔レベルの狭窄が原因であれば、出てくる神経根であるL5神経根が絞扼され、椎間板ヘルニアであればS1神経根が絞扼を受けます。

画像所見(MRI、レントゲン)

レントゲンでは、椎間板ヘルニアの存在を把握する事は不可能で、主にMRIによって、椎間板ヘルニアの有無を確認します。

また、炎症がある場合のMRI所見は、T1でlow、T2でhighになり、さらに脂肪抑制でもhighに写っていれば、そこに炎症がある事を示唆します。これによって急性・亜急性のヘルニアか、陳旧性のヘルニアかを見極める事ができます。

遊離ヘルニアか、脱出ヘルニアかの判断は、椎間板ヘルニアとの連続性があるかで確認できます。必要であれば造営検査で確認する事も可能で、責任椎間板に造影剤を注入後に、透視像で連続性があれば脱出ヘルニアで、ない場合は遊離ヘルニアが考えられます。

膨隆(バルージング)と脱出ヘルニアの違いは、ヘルニア最大径の位置が、椎間板外縁に接しているか否かで見極める事ができます。

椎間板ヘルニアの画像診断の基本はMRIになりますが、レントゲンでも、椎骨どうしの位置関係や、椎間板の厚み(椎間板高)はチェックできるので、「どこの椎間に問題がありそうか?」「他椎間と比較して、高度に損傷している椎間板はないか」などをチェックする事が可能です。

脊椎の動的な要素については、レントゲンによる前後屈像が最適なので、椎間板ヘルニアだからMFIのみを丁寧に見るのではなく、単純レントゲンの読影力を上げることは療法士にとって大きな武器になります。

Dr.カール先生
今後、レントゲンやMRIの読影方法や基礎知識に関する解説記事も書く予定なので楽しみにしていて下さい。

 

椎間板ヘルニアの鑑別疾患

下肢症状を訴える疾患は鑑別疾患の範囲になるが、症状の原因として多いのは、腰部の神経や骨、筋肉の痛みなど。

神経症状で主なものとしては脊柱管狭窄症である。痺れ症状は代謝性疾患や末梢血管障害によっても起こるので、基礎疾患の有無も確認すること。

骨の痛みとしては、骨粗しょう症、圧迫骨折が、関節の場合だと変形性腰椎症・椎間関節症、変性側湾症などがある。

腰部という解剖学的に密集しているところで、たった1つの組織だけが損傷している可能性は低く、多くの場合で骨・関節の問題と神経の問題、そして筋肉(筋膜も含め)の問題などが複合している事が多い。

内科系疾患としては、腎結石などの腎臓由来の腰痛や、骨盤内臓器(前立腺炎・前立腺癌、子宮内膜症などの婦人科疾患)に注意が必要。

 

4.椎間板ヘルニアの治療

薬物療法、注射療法、手術療法などがありますが、神経麻痺が進行していない場合は、急いで手術をする事はなく、主に保存療法による経過観察となります。

また、症状が寛解していかない場合は、障害椎間板を見極めるためにブロック注射による治療的診断を行うのが一般的となっています。

神経の炎症が治める消炎鎮痛剤・ブロック注射

下肢痛の症状は、圧迫よりも、神経の炎症が問題とされています。

脊柱管内のMRI上での神経根圧迫所見は変化(改善)がみられなくても、炎症が引いていけば、強い圧迫・絞扼がなければ元の生活に戻れます。

炎症を抑える目的で、「消炎鎮痛剤」を服用したり、ステロイドを混合したブロック注射を用いて局所(腰の神経)の炎症を抑えるように働きかけるのが、薬を服用したり、注射による治療を用いる理由です。

ブロック注射は局所麻酔剤のみの場合は、炎症を抑える効果はなく、一時的な神経ブロックのみの効果となります。この場合は、仙骨ブロックであろうと、神経根ブロックであろうと、一時的な効果のみなので、責任病巣を把握するため以外の効果はほとんどありません。

単一神経根に局所麻酔を行う事によって、症状が寛解すれば、その神経根が症状の原因であったという事が明確になります(この方法での診断を機能診断と言います)。

また、どの局所麻酔剤を使うかによって、効果の持続時間が変わるので、それも加味して効果があったかどうかを確認していきます。

持続時間 効力 発現時間
プロカイン 1 1 早い
リドカイン 1.5 4 早い
メピバカイン 1.5 2 早い
ブピバカイン 8 16 遅い

また、濃度が薄ければ、感覚を麻痺させるのみで、濃度が濃ゆくなると運動麻痺が出現する。局所麻酔材が効いているかを確認する場合は、痛覚検査で確認すると良い。

ブロック注射を行う病院に勤務している療法士は、必ず局所麻酔剤の種類を確認して、予測される効果持続時間を考慮した上で、問診を行なって下さい。

ブロック効果よりも長く、効果が保たれる場合(「1週間くらい良かった」など)は、心理的な要素が多分に含んでいる事が予測されます。

神経因性疼痛に効く薬

プレガバリン(リリカ)が神経障害性疼痛に効果を示します。

主な副作用としては浮動性めまい、傾眠(眠気)、浮腫、体重増加があり、顕著に副作用が出る人では、酔っ払っているような感覚になり、日常生活動作もままならなくなる人もいるので転倒や車の運転などには注意が必要です。

椎間板ヘルニアの手術療法

  • ラブ法:古くから行われている最もスタンダードな手術法がラブ法(椎間板切除術)
  • 経皮的髄核摘出術
  • 経皮的レーザー椎間板減圧術(PLDD)
  • 内視鏡下ヘルニア切除術
  • 椎体固定術

以下は、手術療法を考慮する椎間板ヘルニア患者です。

数ヶ月のリハビリや薬物療法などの保存的な治療法で効果がない場合や、下肢の力が入りにくいなどの「運動麻痺」に進行がみられる場合、殿部会陰部から両下肢への違和感・しびれ症状や、排尿排便に関係する括約筋の機能低下が認められる場合(膀胱直腸障害)などは手術療法が選択されます。下肢の運動麻痺や括約筋の機能低下は、重症になってからの手術では改善しにくい傾向があるので、腰部椎間板ヘルニアの諸症状の中では早急な手術が考慮されるべき症状です。

 

5.椎間板ヘルニアのリハビリ

リハビリによる保存療法

椎間板ヘルニアによる症状が強い場合に大切になるのは、日常生活上の姿勢や動作の仕方です。椎間板に過度な負担が加わりやすい「よくないやり方」になってしまっていないかをチェックして、その動作指導をする事が重要です。

問題が起こりやすいのは、座位姿勢(椅子座位、車の運転)、荷物の積み上げ動作、洗面時の中腰姿勢などです。

また、症状が強い時期は、クシャミや、咳などでもかなりの痛みが出るが、腰が曲がらないようにして、姿勢を伸ばした状態をキープして、やや上に向かってクシャミをすると痛みを増悪させずに済みます。

麻痺の影響で弱化してしまった筋肉については、自動運動が可能であれば筋力強化運動を行い、自動運動も難しい場合は電気刺激を併用して行う方法もあります。

Dr.カール先生
痛みが強い時は楽な姿勢で動いて、腰が持続的に曲がらないように気をつけながら動作をすると良いですよ。「悪い姿勢」と言われるような腰が曲がった状態の座位は症状を悪くする可能性があるからできるだけやらないように指導しましょう!

術後のリハビリ|後療法

脱出部位に強い圧(椎間板内圧が上がる動作・姿勢)を加えると再脱出の危険性があるので、必ず、手術医に確認をとってから抗重力位をとるようにしましょう。

手術方法や、腰椎の構造的な不安定性の有無で、後療法の進行は変わってきます。

一般的には、保存療法と同じような動作・姿勢に関する指導と、体幹筋力強化の運動などを行う事が多いですが、筋力による椎骨の固定は現実的には難しいとされています。

再発の恐れがある病気なので、姿勢・動作指導についてはしっかりと行なっておくことが重要です。手術をする事になった患者さんのほとんどが神経症状が出現しているはずです。運動麻痺がみられる場合は筋力強化運動を考慮しましょう。

6.腰部椎間板ヘルニア患者さん向けアドバイス

椎間板ヘルニアは、腰や脚に痛み・痺れがある人に対してよく診断される整形外科の病気ですが、しっかりと診察もされずに安易に「椎間板ヘルニア」という診断が下っている場合もあります。

ここで解説した記事を読んで、自己判断はよくないので、症状がある場合は必ず整形外科医にみてもらいましょう。

そこで大切になってくるのが、「しっかりと身体検査をしてもらったか?」になります。

上記で解説した「椎間板ヘルニアの診断方法」の項に詳細は記載していますが、椎間板ヘルニアは、MRI検査だけでは分からず、しっかりと身体検査をする必要があります。

ここで言う身体検査とは、反射検査用のハンマーを用いて膝やアキレス腱を叩いて反応をチェックしたり、筋力が保たれているか、感覚に異常がないかを細かくチェックする事です。

もし、身体検査をせずにMRIだけを見て「椎間板ヘルニアです。」と言われた人は、それを鵜呑みにせず、セカンドオピニオンを考えて下さい。

また、リハビリテーションに関しては、飛び出た椎間板を引っ込める事が目的ではなく、負担の繰り返しよって炎症を長引かせない事。痛みが引いたら、椎間板に過度な負担をかけない動作や姿勢のとり方を習得する事です。

もし、マッサージで症状が寛解する場合は、椎間板ヘルニアより神経症状ではなく、筋肉や関節などの問題かもしれません。

Dr.カール先生
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